1.住宅宿泊事業法で民泊(住宅宿泊事業)を行う事が出来る地域・期間
これまでの旅行業法において、旅館・ホテル等の宿泊施設は、用途地域の内、住居専用地域や工業地域では営業する事が出来ませんでした。(工業専用地域は住宅を建てることそのものが出来ないため当然に事業不可)
(1)営業可能な用途地域
しかし、住宅宿泊事業法では、住居専用地域、工業地域でも宿泊(民泊)事業を行うことが可能になります。ただし、営業できる期間は、旅館・ホテル等の旅館業法上の宿泊施設と異なり、各届出住宅ごとに年間で180泊※に制限されます。(4月1日正午~翌年の4月1日正午までの1年間で180泊)
※「宿泊させた日数」の計算について
住宅宿泊事業における「日数」の計算は、届出住宅ごとに行うため、年の途中で事業者が変更になったとしても、前の事業者での日数を引き継ぐことになります。
また、複数の宿泊グループが同一の日に宿泊していた場合にも、日数は「1日」と計算します。
例えば、4室を有する届出住宅に4つのグループが、4月1日に宿泊した場合でも日数は「1日」とカウントします。逆に言うと、4室を有する届出住宅の1室だけに1つのグループが4月1日に宿泊していたとした場合でも、日数は「1日」になるということです。これは届出住宅単位での計算となるためです。
なお、届出住宅(民泊を行う住宅家屋)の所在場所の用途地域を調べるには、各市役所に備え付けられている用途地域地図で確認を行ってください。
なお、現在は多くの自治体のホームページ上で用途地域を確認することが可能になっています。例:大阪府用地地域地図
(2)その他、地域による営業制限の有無の確認が必要な事項
①都市計画法の「特別用途地区」「地区計画」等による制限の有無
⇒届出住宅所在地の市町村都市計画担当部局で確認してください。
「特別用途地区」とは
地方公共団体の条例により” 用途地域による建築物の制限を強化(一定の場合には緩和)することができるようにしたものが「特別用途地区」です。上記(1)の用途地域のうち、いずれかが指定されたところに重ねて指定 されるものです。
一般的には用途地域による制限を強化する目的のもので、具体的な制限内容は地方公共団体の条例によって定められます。
「地区計画」とは
「地区計画」は、地区ごとのきめ細かなまちづくりをおこない、良好な市街地環境を創出するため、ベースの用途地域等による一般的な制限に加えて、道路・公園などの施設の配置や建築物の用途や形態に関する制限などを詳しく定めるものです。
②市街化調整区域での住宅宿泊事業
⇒都市計画法第43条にかかる用途の変更の許可が必要な場合があります。届出住宅所在地の開発許可権限を有する行政庁の開発担当部局で確認してください。
(参考)市街化調整区域での住宅宿泊事業(事例)
当事務所で某市に相談行った際の事例になります。
あくまでも参考及び備忘として記載いたします。出来るだけ平易に記載しておりますので、法律用語の厳格な内容からそれる部分がありますことをご了承ください。
ポイントとしては、
①所有者が住宅宿泊事業者であるか?
所有者から賃貸しての住宅宿泊事業は、都市計画法上の用途変更にあたる取扱いとなり、都市計画法において認め
られる行為に含まれないというのが、当該の市での解釈でした。この場合には、住宅宿泊事業や民泊は認められない。
②所有者が住民票を置く生活の本拠であるか
家主不在型の住宅宿泊事業は、市街化調整区域の制度主旨に合致しないのではないかとの解釈あり。これを規制するかは、平成30年3月15日現在、結論は出ていないようです。
③線引き前(昭和 45 年10 月 31 日、又は当該都市計画の変更によりその区域が市街化調整区域とされた日)からあった建築物で、かつ建築基準法上の用途が住宅宿泊事業法上の「住宅」であるかどうか。⇒現在の所有者から購入し、住宅宿泊事業が可能かどうかの判断の基礎
「線引き前からの建築物である場合」・・・現在の所有者から買い取り、買主への所有権移転に許可が不要で、買主が将来建て替えや増改築をする場合であっても、用途・敷地が同じで、規模が同程度なら開発許可が不要。
「線引き後の建築物である場合」・・・線引き後の建築物である場合には、所有者が変更になる事が、用途変更になるため、開発許可が新たに必要となり、現実的には住宅宿泊事業は不可又は困難と考えられます。
上記以外にも、住宅宿泊事業を行うために、市街化調整区域にある建物を増改築する場合には、建築指導課及び開発担当部局への申請が必要となる場合がありますので、こちらも注意が必要です。
③建築協定地区における事業の実施の制限の有無
⇒届出住宅所在地の建築協定地区で確認してください。
建築協定は建築協定の区域をさだめ、その区域内の土地の所有者等の全員の合意をもって、建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠又は建築設備に関する基準、違反があった場合の措置の方法などを定めることができます。
これらの事項をさだめた地区で、建築協定書の基準によらない建築行為がおこなわれた場合、建築協定区域に設置した運営委員会より工事施工の停止請求、是正勧告を行うことができます。
2.条例による営業地域・期間制限
住宅宿泊事業法では、「工業専用地域を除く全ての用途地域」で「年間180泊」まで、民泊を行う事が出来ると定めていますが、民泊を行う事による生活環境の悪化(騒音や治安不安等)を防止する観点から、各自治体において独自に住宅宿泊事業の適正な実施を目的とした条例を定め、その中で、営業地域や営業期間を法律より厳しく制限するケースが多く存在しています。条例内容についてはこちらを参考ください。
特に多く見受けられる制限は、住居専用地域や学校近辺において、平日の営業を禁止する内容になっています。
このため、住宅宿泊事業法にもとづき民泊事業を行うには、届出住宅(民泊を行う住宅家屋)の所在場所の用途地域が、住宅宿泊(民泊)事業可能な用途地域かどうかを確認して、事業準備を進めていくことが必要です。
3.周辺住民への住宅宿泊事業の事前説明
住宅宿泊事業法の施行要領(ガイドライン)では、周辺住民への住宅宿泊事業を行う旨の事前説明については、「行う事が望ましい」という努力義務としています。しかし、この点についても周辺住民の不安を除くため、各自治体の条例において、事前説明を「しなければならない」と義務を課しているケースが多くあります。また、事前説明の時期(事業届出前の何日前)や事前説明の方法(説明会の実施や事業内容の掲示等)等を規定している自治体もあり、事前説明の必要性の有無だけではなく、その方法も確認していく必要があります。
また、事前説明が必要な周辺の範囲についても、ご注意ください。
次ページで、住宅宿泊事業における「物(物件、住宅)の要件」について説明していきます。