住宅宿泊事業法で重要となる点の一つが、必要となる消防設備や宿泊者の安全確保の問題です。導入費用の面からも、消防設備等の設置は、その内容により大きな費用負担になる可能性があります。
それでは、住宅宿泊事業法で民泊(住宅宿泊事業)を始めるにあたって、必要となる宿泊者の安全確保のための措置(消防設備等)についてみていきたいと思います。
★消防設備については、住宅の床面積や構造、防火地域であるか否か等、ケースにより必要となる設備が異なります。必ず事前に届出住宅の管轄の消防署にご確認ください。
1.住宅宿泊事業法及び規則等からみる安全確保について必要な設備の考え方
まず、住宅宿泊事業法の中での安全確保についての記載をみておきます。
住宅宿泊事業者は、届出住宅について、非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他の火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置であって国交通省令で定めるものを講じなければならない。(第6条)
第6条から、(1)非常用照明の設置、(2)避難経路の表示、(3)火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置、が必要であることがわかります。
では、それぞれを順にみていきます。
①「避難経路の表示」の必要性の有無
まず、(2)の避難経路の表示については、例外規定が設けられていませんので、届出住宅の規模、家屋の別(戸建、共同住宅等)に関わらず、必ず必要です。
②非常用照明及び宿泊者の安全確保のために必要となる措置
次に(1)非常用照明の設置、(3)火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置については、国土交通省告示第1109号において、詳細に定められ、また「民泊の安全措置の手引き」〈発行:国道交通省 住宅局 建築指導課〉において解説されています。
注意すべきは、この告示第1109号と「民泊の安全措置の手引き」において、必要となる消防設備の内容等がすべて明確にされているものではなく、この告示・手引きは建築基準法の観点(建築物の観点)からの必要な措置内容を定めているものになります。
宿泊者の安全に確保に必要となる(4)消防設備の詳細については、消防法令に定めています。住宅宿泊事業法に基づく届出住宅に必要となる消防設備の考え方については、消防予第330号「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて」通知がだされていますので、これに基づき、必要となる消防設備を考えていくことになります。
それでは、順に(1)非常用照明器具(3)宿泊者の安全の確保に必要となる措置をみていきましょう。
2.「民泊の安全措置の手引き」にみる届出住宅に必要な措置、設備とは
国土交通省告示第1109号を解説した「民泊の安全措置の手引き」では、必要な措置として大きく3点を挙げ、解説しています。
①非常用照明器具の必要の有無(告示第一)
②届出住宅における防火の区画又はそれに代わる措置の内容(告示第二第一号イ)
③届出住宅(戸建、長屋)の規模による措置(告示第二第二号イ~ホ)
②及び③が宿泊者の安全の確保に必要となる措置にあたる部分といえます。では、順にみていきましょう。
①非常用照明器具が必要な届出住宅かどうか
住宅宿泊事業法第6条では、必要な設備として非常用照明器具が挙げられていますが、これについては、すべての届出住宅で必要とされるわけではありません。設置が必要となるのは、以下のような場合です。

※ここでいう「居室の面積」は、便所や浴室は含まないことに注意する。建築基準法第2条4号で定める居室。
★平成30年3月29日改正告示が施行され、非常用照明装置の設置基準が緩和されました。
上記図のCの下にdとして以下を追加する。
d.居室(宿泊室やLDK)等で下記のいずれかに該当するもの
・床面積が30㎡以下の居室で、地上への出口を有するもの
・床面積が30㎡以下の居室で、地上まで通ずる部分が次の①又は②に該当する場合
①非常用の照明装置が設けられたもの
②採光上有効に直接外気に開放されたもの
つまり、前提として届出住宅で宿泊室の床面積合計が50㎡以下かつ家主居住型の場合には、非常用照明は不要です。
この【宿泊室床面積合計50㎡以下かつ家主居住型】というのは、安全確保の措置(消防設備等)を考えるうえで、重要な基準になりますので、留意ください。
②届出住宅における防火の区画又はそれに代わる措置の内容
届出住宅において火災の延焼を防ぐため、宿泊室と避難経路の間を準耐火構造の壁で区画する必要性があるかどうか、また防火の区画に代わる措置についてです。

まず、ここでも宿泊室の床面積の合計が50㎡以下かつ家主居住型の場合には、防火の区画等は不要ということです。
また、上記に該当しない場合でも、届出住宅に「複数の宿泊室があり」かつ「各宿泊室に同時に複数のグループを」宿泊させない場合には、防火の区画等は不要という事になります。ただし消防法令での規定に注意が必要です。
では、防火の区画等が必要な場合、図では②のA)~C)のいずれかの対応が必要としていますが、これには、次の3つの方法があります。
A)防火の区画
B)自動火災報知設備の設置
C)スプリンクラー等の設備の設置
A) 防火の区画
下記の1)~5)の区画等の措置について、該当するものを全て実施
1) 宿泊室と避難経路の間を小屋裏又は天井裏まで到達させる準耐火構造の壁で区画。※1。
※宿泊室の出入口等の開口部については措置求めていない。
2) 4室以上の宿泊室が互いに隣接する場合。
宿泊室間を3室以内ごとに小屋裏又は天井裏まで到達させる準耐火構造の壁で区画※1。
3) 隣接する2室以上の宿泊室の床面積の合計が 100 ㎡を超える場合。
100 ㎡以内ごとに小屋裏又は天井裏まで到達させる準耐火構造の壁で区画※1。
4) 給水管、配電管その他の管が(1)から(3)までの壁を貫通する場合。
当該管と準耐火構造の区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋める。
5) 換気、暖房又は冷房の設備の風道が(1)から(3)までの壁を貫通する場合。
当該風道の準耐火構造の区画を貫通する部分又はこれに近接する部分に、火災による急激な温度上昇の際に自動閉鎖し、閉鎖した際に防火上支障のない遮煙性能と遮炎性能を有する防火ダンパーを設ける。
※1:フロアの天井全体が強化天井である場合等は壁による区画を小屋裏又や天井裏まで到達させる必要はない。
B)自動火災報知設備等の設置
消防法令に定められている技術上の基準に適合するように自動火災報知設備等を設置した上で、居室については下記1)~3)のいずれかに適合させる。
1) 居室から直接屋外への出口等※2に避難できる。
2) 居室の出口から屋外への出口等※2の歩行距離を8m以下。かつ壁及び戸によって通路と区画する。※3
3) 居室の出口から屋外への出口等※2の歩行距離が 16m以下。かつ各居室及び各居室から屋外への出口等に通ずる主たる廊下その他の通路の壁(床面からの高さ 1.2m以下の部分を除く。)及び天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料とし、壁及び戸によって通路と区画する。※3
※2:直接屋外へ通じる出口又は避難上有効なバルコニー(十分外気に開放されているバルコニー等)
※3:戸についてはドアクローザーが設けられているもの等
ドアクローザーは、玄関ドアや室内ドアの上部に取り付け、閉扉時の「バタン」という音の発生を防いだり、開扉状態で固定したりといった機能をドアに持たせるための装置
C) スプリンクラー設備等の設置
床面積が 200 ㎡以下の階又は床面積 200 ㎡以内ごとに準耐火構造の壁・
防火設備で区画されている部分に、消防法令に定められている技術上の基
準に適合するようにスプリンクラー設備等を設置する。
ここで、掲げられているA)からC)のうち、最も設備設置が現実的なのは、B)自動火災報知設備等の設置かと思われます。この告示及び手引きを見ると、届出住宅に「複数の宿泊室があり」かつ「各宿泊室に同時に複数のグループを」宿泊させない場合には、自動火災報知設備等の設置の必要がないと考えてしまいますが、あくまでも、これは建築基準法の観点から要求される措置です。消防法令から求められる消防設備はまた異なることに注意が必要です。具体的に必要となる自動火災報知設備等の消防設備については、消防法令の内容で解説いたします。
③届出住宅が戸建、長屋である場合、その規模による措置(告示第二第二号イ~ホ)
届出住宅が一戸建ての住宅又は長屋(1つの長屋の複数の住戸において届出が行われている場合には、各届出住宅単位で措置を行うこととする。)である場合には、宿泊者の使用する部分の床面積(住宅宿泊事業法ガイドラインの「宿泊室」+「宿泊者の使用に供する部分(宿泊室を除く)」の合計面積)に次の制限があります。
a.3階以上の階に宿泊者使用部分があるかどうか?
⇒届出住宅が耐火建築物でないと3階以上の階に宿泊者使用部分を設けることはできません。(告示第二第二号ホ)
b.2階以上の各階の宿泊室の床面積合計が100㎡を超える場合、以下の基準に適合すること。
⇒100㎡を超える場合には、その階から避難階又は地上に至る直通階段が2経路以上必要。(告示第二第二号イ)
⇒2階については、届出住宅が準耐火建築物である場合を除き、宿泊者使用部分の床面積合計は300㎡未満とすること。(告示第二第二号ニ)
c.宿泊者使用部分の床面積合計が200㎡を超える場合、以下の基準に適合すること。
⇒届出住宅が耐火建築または準耐火建築物である場合を除き、宿泊者使用部分の居室及び居室から地上に通じる部分の内装仕上として難燃材料等※1が用いられていること(告示第二第二号ロ)
⇒廊下の幅は 1.6m以上(居室が廊下の片側にある場合には 1.2m以上)であること。ただし、3室以下の専用の廊下は対象外(告示第二第二号ハ)
d.各階の宿泊者使用部分の床面積合計が200㎡を超える場合、以下の基準に適合すること。
⇒廊下の幅は 1.6m以上(居室が廊下の片側にある場合には 1.2m以上)であること。ただし、3室以下の専用の廊下は対象外(告示第二第二号ハ)
※1難燃材料とは
| 防火材料 | 仕様で規定されたもの | 加熱開始から燃焼までの時間 | 用途、要求性能 |
| 不燃材料 | コンクリート、ガラス、モルタル、 厚さが12mm以上のせっこうボード等 |
20分 | ①燃焼しないものであること。 ②防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること。 ③避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること。 |
| 準不燃材料 | 厚さが9mm以上のせっこうボード、 厚さが15mm以上の木毛セメント板等 |
10分 | |
| 難燃材料 | 難燃合板で厚さが5.5mm以上のもの 厚さが7mm以上のせっこうボード |
5分 |
3.消防法令における必要措置
住宅宿泊事業法の「届出住宅」(民泊実施施設をいう)は、人を宿泊させる施設だが、消防設備等は旅館・ホテルと同様の設備が必要か?
それでは、次に住宅宿泊事業法で設置が必要となる消防設備について、消防法令からみていきたいと思います。
国土交通省告示第1109号及び「民泊の安全措置の手引き」では、届出住宅に「複数の宿泊室があり」かつ「各宿泊室に同時に複数のグループを」宿泊させない場合には、自動火災報知設備等の設置の必要がないと考えてしまいますが、消防法令ではどのようになっているのか。
これについては、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(消防予第 3 3 0 号)を、もとにすることになります。
①住宅宿泊事業法における届出住宅は、消防法令上は原則、ホテル・旅館等と同じ扱い
この通知では、「住宅宿泊事業法における「届出住宅」は、消防法施行令別表第1(5)項イに掲げる防火対象物(旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの)又はその部分として取り扱うものとする。」としています。
このため原則は、消防設備は、「旅館・ホテル等」と同じように設置が必要になるということです。
なお、 宿泊施設として取り扱われる部分のカーテン、じゅうたん等は防炎物品とすることが必要になりますので、その点も注意が必要です。
②家主居住型の届出住宅の場合の取扱い
しかし、但し書きとして、家主居住型の届出住宅については、宿泊室(届出住宅の居室の内、宿泊者の就寝の用に供する室)の床面積の合計が 50 ㎡以下となるときは、当該届出住宅は、「住宅」として取り扱うものとするとしています。
ここから、消防設備等を考えるに当たっては、「家主居住型かつ宿泊室の床面積の合計が 50 ㎡以下の届出住宅」と「それ以外」で見ていく必要があることになります。
では、「住宅と「旅館・ホテル等」では、必要となる消防設備にどのような違いがあるのでしょうか? 消防庁の資料をもとに概要を示した図が以下になります。
(1)設置が義務付けられる消防設備の比較 (概要) <表1>
各設備が義務付けられる延べ床面積を記載している。なお、この表は概要ですので、詳細は届出住宅所在地の管轄の消防署にお問合せください。
| 一般住宅 | 旅館・ホテル等 (5)項イ※ <特定用途防火対象物> |
||
| 戸建住宅 | 共同住宅、寄宿舎 (5)項ロ※ <非特定用途防火対象物> |
||
| 住宅用火災警報器 | 全て | 500㎡未満まで | |
| 自動火災報知設備 | ・500㎡以上で必要 ・地階、無窓階、3階以上の階で床面積300㎡以上 ・11階以上の階は全部に設置 |
・床面積に関わらず必要 | |
| 誘導灯 | 地階・無窓階、11階以上は全部に設置 | ・ 床面積に関わらず必要 ・小規模特定用途複合防火対象物は設置不要(地階、無窓階、11階以上は設置必要) |
|
| 消火器具 | ・ 150㎡ 以上で必要 ・地階・無窓階又は3階以上の階で床面積が50㎡以上は設置 |
・ 150㎡以上で必要 ・地階・無窓階又は3階以上の階で床面積が50㎡以上は設置 |
|
| スプリンクラー設備 | 11階以上の階は全部設置 | ・ 6000㎡以上(平屋建を除く)必要 ・11階以上の階は全部設置 ・5項イのある階で、地階、無窓階で床面積1000㎡以上 ・5項イのある階で、4階以上10階以下の階で床面積が1500㎡以上 ・小規模特定用途複合防火対象物の10階以下の階は設置不要 |
|
| 防火管理者選任 | 収容人員50人以上で選任必要 | 収容人員30人以上で選任必要 | |
| 消防訓練 | 年1回以上 | 年2回以上 | |
| (備考) | ・カーテン、じゅうたん等は防炎物品 | ||
※(5)項イ・ロとは、消防法施行令別表第一(5)項をさす。
<特定用途防火対象物>・・・防火対象物の中で最も消防用設備や防火設備の設置基準が厳しい。より小さな規模から、例えば自動式の消火設備や警報設備、実効的な管理体制等の整備が必要となる。
このことから、申請者が居住する住宅(戸建て、長屋、共同住宅、寄宿舎)を住宅宿泊事業法にて、「届出住宅」として住宅宿泊事業を行う場合には、「宿泊室」の合計面積が50㎡以下であれば、上記の消防設備の内、一般住宅としての「住宅用火災警報器」のみ必要ということになります。ただし、戸建て以外の場合には、一棟で消防法令上の取扱いを考えていく必要があります。たとえば、長屋や共同住宅・寄宿舎の場合には、建物全体を一棟として消防法令適合を考えることになります。
(例)長屋の1室に居住する事業主がその自宅を届出住宅として住宅宿泊事業法を行う場合。
①Yさんが長屋である自宅で宿泊室50㎡以下の住宅宿泊事業法を行っているだけで、その他はすべて一般住宅である。⇒長屋は消防法上、戸建て住宅と同じ扱いになる為、届出住宅には、住宅用火災警報器の設置で可。
②Yさんが長屋である自宅で宿泊室50㎡を超える住宅宿泊事業法を行う。その他はすべて一般住宅である。⇒Yさんの住宅宿泊事業における届出住宅(民泊施設)が、上記1表における「旅館・ホテル等(5項ロ)」扱いとなり、消防設備の設置が必要になります。また、長屋を一つの防火対象物として、消防法施行令別表第一(16)項イ※ の複合用途防火対象物になるため、長屋全体に消防用設備等の設置が必要になる場合があります。
※(16)項イの複合用途防火対象物に必要となる消防設備は、後ほど記載いたします。
長屋とは?
二つ以上の住宅を一棟に建て連ねたもの。各住宅が壁を共通にし、それぞれ別々に外部への出入口をもっているもの。いわゆる「テラスハウス」と呼ばれる住宅もここに含まれる。大阪市の建築基準法取扱い要領では、概要以下のように定義されています。
・ 2 以上の住戸又は住室を有する建築物
・隣接する住戸又は住室が開口部のない壁又は床を共有する。
・廊下、階段等の共用部分を有しない。
・各戸の主要な出入口が道路又は有効幅員 3m以上の敷地内通路に面する。
(2)申請者が居住する住宅(戸建て)で住宅宿泊事業を行う場合の消防設備
第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討会にて配付された資料の中に、「一般住宅の一部を民泊として活用する場合に想定される消防用設備等について」が示されています。この資料は消防法令の原則に基づいて、民泊施設が一般住宅の一部にある場合を示したものになります。この資料内容には、実際の住宅宿泊事業法に反映されなかった部分がありますので、修正して掲載させていただきます。

(第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討会 配付資料 消防庁)
また、上記資料中の内容を住宅宿泊事業にあてはめた場合には、下記のようになります。
| 一般住宅 | 民泊(宿泊室50㎡超) |
建物全体が宿泊施設として取り扱われる。
○必要となる消防用設備
①消火器・・・建物の延べ面積が150㎡以上の場合
②自動火災報知設備・・・・すべて(注1)
③誘導灯・・・・すべて(注2)
(注1) 既存の建物であっても無線方式の導入により簡便な追加工事で対応可能な場合あり。
(注2) 農家民宿等については、一定の条件を満たす場合には設置不要。また一定の面積以下の居室の出入り口には設置不要。
*宿泊施設として取り扱われる部分のカーテン、じゅうたん等は防炎物品とすることが必要。
★住宅の一部(例:2階建の2階のみ民泊施設とする)や長屋の場合、又建物全体の延べ床面積300㎡以上か否かなど、ケースにより必要となる消防設備や設置が必要とされる部分が変わってきます。必ず、事前に管轄の消防署にご確認のうえ、手続きを進めてください。
(3)共同住宅における消防設備を考えるうえでの注意点
「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて」では、「届出住宅が一部に存する共同住宅等については、当該届出住宅ごとに用途を判定した上で、棟ごとにその用途を「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」(昭和 50 年4月 15 日付消防予第 41 号・消防安第 41 号)により判定すること」とされています。
例えば、①大阪マンションでは、Aさんが自宅部分で宿泊室50㎡以下の住宅宿泊事業法を行っているだけで、その他はすべて一般住宅である。⇒マンション全体は上記表の一般住宅(5項ロ)扱い。届出住宅には、住宅用火災警報器の設置で可。
しかし、②京都マンションでは、AさんとBさんがそれぞれ自宅部分で、宿泊室50㎡以下の住宅宿泊事業法を行っていて、それぞれを合計すると50㎡を超える。⇒マンション全体が消防法施行令別表第一16項イ(※)となるとともに、Aさん、Bさんの届出住宅は上記表1の5項イにあたり、表1記載のとおりに各設備が必要。(また、マンションの廊下、階段等に誘導灯、マンション全体に自動火災報知機の設置などが必要になる可能性があるため、事前の消防署との協議を綿密に行う必要があります。)

(第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討会 配付資料 消防庁)
(※)消防法施行令別表第一(16)項イ は 複合用途防火対象物 といい、消防法で、複数の用途に使用されている建物のこと。いわゆる雑居ビルや店舗・事業所等を併設する共同住宅などがこれにあたります。」
なお(16)項イは、特定用途防火対象物(防火対象物の中で最も消防用設備や防火設備の設置基準が厳しい)に該当します。
ここでは、消防法施行令別表第一のいずれにあたるのかの判定フローチャートを参考に掲示しておきます。 <表2>

(4) 建物が複合用途防火対象物:消防法施行令別表第一(16)項イとなる場合の消防設備(概要) <表3>
| 共同住宅 (5)項ロ |
建物全体として(16)項イ | |||
| 旅館・ホテル等 (5)項イ |
その他の共同住宅部分((5)項ロ部分) | |||
| 小規模特定用途複合防火対象物※1 | 左記以外
特定用途(例:住宅宿泊事業)の床面積の合計が全体の10%超 等 |
|||
| 自動火災報知設備 | ・ 500㎡以上で設置
・地階、無窓階、3階以上の階で床面積300㎡以上 |
面積に関わらず設置 | ・特定用途(例:住宅宿泊事業)と共同住宅の床面積の合計が500㎡以上は設置
・地階、無窓階、3階以上の階で床面積が300㎡以上は設置 ・11階以上の階は全部に設置 |
・延面積300㎡以上は設置
・11階以上は共同住宅と同じ |
| 誘導灯 | 地階・無窓階、11階以上は全部に設置 | ・ 面積に関わらず設置 ・小規模特定用途複合防火対象物は設置不要(地階、無窓階、11階以上は設置必要) |
共同住宅と同じ | 面積に関わらず設置 |
| 消火器具 | ・ 150㎡ 以上で設置 ・地階・無窓階又は3階以上の階で床面積が50㎡以上は設置 |
・ 150㎡以上で設置 ・地階・無窓階又は3階以上の階で床面積が50㎡以上は設置 |
共同住宅と同じ | 共同住宅と同じ |
| スプリンクラ|設備 | 11階以上の階で設置 | ・ 6000㎡以上(平屋建を除く) ・11階以上の階は全部設置 ・5項イのある階で、地階、無窓階で床面積1000㎡以上 ・5項イのある階で、4階以上10階以下の階で床面積が1500㎡以上 ・小規模特定用途複合防火対象物の10階以下の階は設置不要 |
共同住宅と同じ | ・11階以上の建物は全部設置
・5項イのある階で、地階、無窓階で床面積1000㎡以上に設置 |
※平成30年6月1日消防法施行規則等の一部を改正する省令等が交付され、上記16項(イ)の場合の消防設備が一部緩和されました。詳細はこちらを参照ください。
※1 小規模特定用途複合防火対象物・・・特定用途の床面積の合計が全体の延面積の10%以下、かつ、300㎡未満である16項イ(特定一階段等防火対象物※2を除く)
※2 特定一階段防火対象物・・・避難階以外の地階または、三階以上の階に特定用途(この事業では住宅宿泊事業)部分があり、当該階から避難階または地上に直通する階段が一つ(屋外階段等を除く)のもの。
階段が1つしかなくても、それが屋外階段か「特別避難階段」なら、当該防火対象物は「特定一階段等防火対象物」にはならない。屋内の「避難階段」の 場合は、開口面積2㎡以上など消防庁長官が定め る排煙上有効な開口部が設置されたものなら同様に 「特定一階段等防火対象物」にはならない。(消則4 条の2の3、平成14年消防庁告示7号)。
(5)特定小規模施設にあてはまる場合の消防設備について
下記に当てはまる場合には、自動火災報知設備に代えて、特定小規模施設用自動火災報知設備(無線連動式などの自動火災報知設備)を設置することができます。
| 特定小規模施設用自動火災報知設備 を設置することができる防火対象物 |
|
| (二)項二 カラオケボックス・個室ビデオなど (五)項イ 旅館・ホテル・宿泊所など (六)項イ 病院・診療所など[3床以下の診療所を除く] (六)項ロ老人短期入所施設・養護老人ホームなど(六)項ハ老人デイサービスセンター・軽費老人ホーム・保育所など [利用者を入居させ、または宿泊させるものに限る] |
延べ床面積が300㎡未満(特定一階段等防火 対象物を除く) |
| (十六)項イ 延べ床面積が300㎡未満で、かつ下記の用途に供される部分の床面積の合計が300㎡未満 (二)項二・(五)項イ・(六)項ロ・(六)項イ・ハ [利用者を入居させ、または宿泊させるものに限る] |
(6)消防設備設置のために必要となる届出について
住宅宿泊事業法では、住宅宿泊事業を始める際の届出書に「消防法令適合通知書」の添付が必要となります。この書類については、消防設備の設置後に、管轄の消防署に消防法令適合通知書交付申請書を提出し、交付を受けることになります。
それ以外にも、消防設備設置の際には、消防設備士により以下のような届出を管轄の消防署に行う必要があります。
①工事着工届出書 (軽微な工事の場合には届出省略可能)
②消防用設備等設置届出書
③防火対象物使用開始届出
④防火管理者選任届出((五)項イ 旅館・ホテル・宿泊所などの場合、収容人員30人以上で必要)
⑤消防計画届出(防火管理者の選任が必要な施設の場合に必要
